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先々に若者向けの店が並ぶ地下通路を進むと、ふと左腕に違和感を感じた。
足を止めることも目を向けることもなく右腕で掴んでみる。
いつもどおり、生暖かい左腕があるだけだった。
なんだ、と一言漏らしてしまったのは、違和感がまだ拭えないからで、不安感を押し隠したかったから。
こうして左腕は自身の右腕により存在を示している、それは不調でもなんでもないことの何よりの証拠だった。
しかし、何故だか胸がざわついて仕方がないのだ。
少しの逡巡の後、意を決して視線を落とした。
右腕から右手へ、そして掴んでいる左手へと流し見る。
なんだ、やっぱりおかしくなんかないじゃないか、そう脳裏に浮かんだ瞬間、戦慄が走った。
思わず右手に力がこもり左腕の感触を生々しく感知する。
左腕が二本あった。
カバンを提げているほうの左腕の二の腕あたりから同じような腕が生え、今右手によって掴まれているのだ。
ひっ、と喉が悲鳴をあげ、咄嗟に右腕を離そうとしたが混乱した頭はきつく握りしめた拳をうまく動かせなかった。
半狂乱になりながらどうにか離した右腕が、今度は自分の意志でなく左腕に撫でられる。
なんなんだ、と思う余裕さえ吹き飛んだ思考で、導き出されたのは愚かな考えだった。
自由な右腕で制御下にない左腕を捕まえる。
そして衝動のままに腕を生え際、つまりもとからあった左腕に押し込み始めた。
皮膚が歪み、骨が軋む音がする。
それに構うことなくただその腕が消えることを祈って力のかぎり捩じ込んだ。
ズッ、という形容しがたい音がし、心無しか腕が沈んでいった。
潜り始めればあとは簡単で、ただずっと押し続けるのみだ。
ズッ、ズズッ、と気味の悪い音をたて腕が長さを短くしていく。
もとの左腕に入った、というよりは溶けていったかのように消えていく左腕はもうあと手首から先を残すのみになった。


という夢を見ました。ついさっき。
なんだろ、内に潜むもう一人の自分の意志が勉強しろって言って今日1日の私を諌めてるのかな。
了解であります、もう一人の僕、怖い夢をありがとう。
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