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ニールのはなかなかに書けないのでライるんのから。

らいるんの、つってもニールが関わるのは当たり前ww
一応本編沿いだからライアニュかな?
ライアニュは大プッシュ中なのです♪

英文が間違ってる気がするけど無視してください(泣




おかしい。
ライルがトレミー内の異変に気付いたのは機体整備を終えた頃だった。

マイスター達は自分自身で常の機体整備を行うと聞き、操作を覚えたのはついこの前。
今も少々手こずりながら機体の正常稼働を確認し、リフトで下に降りようとした時だった。
出入り口の陰に桃色の髪がなびくのが見えた。
この艦でその鮮やかな色を持つ者はフェルト・グレイスただ一人だ。
以前兄との違いをわからせてやってから、彼女はライルにニールの陰を重ねることはあまりしなくなった。
流石に双子なだけあって表情が似ることもあり、完全にとはいかないらしいが、まぁ不快ではなくなるほどだった。
その彼女が自分を見ていた?
ライルの胸にCB参加したての時に生じた靄が漂った。
あれだけしてやって叩かせてもやったのにまだわからないのか?と。
幼い時より兄にはコンプレックスしか感じず、双子といえど過ごした時は長くなかったライルにはいつまでも自分のよく知らない人と比べられるのには心穏やかではなかった。
ましてや恋愛感情など、面倒なだけだった。
それにライルにはすでにアニューという意中の人がいる。
誤解を招く行動は極力避けるべきだ。
ライルはリフトが降りきると直ぐにフェルトの消えたほうへと向かった。
もう一度ニールとの違いを示す必要があると判断して。

通路は二手に分かれていた。
ブリッジに続くほうへ行けば意中の人、アニューと会うことは確実だろう。
しかしフェルトを探して示しをつけようとする今彼女に会うことは好ましくなかった。
そしてライルは食堂へと続く通路を選んだ。
艦内は乗員人数に比べかなり広いため誰かとすれ違うことは稀だった。
するすると食堂までの道を行きもう少し、というところでミレイナに会った。
「ストラトスさん!?」
大げさな反応に驚いた。
彼女とはあまり話したことがないにしてもこれは驚きすぎだろう。
「なんだよ、そこまで驚かれると傷つくなぁ」
笑い半分に茶化すとミレイナはハッと後ろを振り返り慌てたようにライルへ向かってきた。
「す、ストラトスさんもう整備終わったのですか?覚えたてなのにスゴイです、私なんかパパに何回も教わったのに、ああ、やっぱり心配になってきました、も、もう一回見てきたほうがいいです!もしかしたら見忘れてるところがあるかもです!!」
半ば押されながら食堂付近の通路から遠ざかってしまう。
「い、いや、ちゃんと見たから大丈夫だって。何をそんなに・・・」
「いいからストラトスさんはこっちに来ちゃダメなんですっ」
最終的に近寄るな、と勧告されてしまった。
ライルを近づけたくない理由、それは先程のフェルトと関係があるのでは?
つまり食堂にフェルトがいるのではないか?
ライルに見つかったフェルトは気まずさからミレイナに門番を頼んだのだろう。
ライルはミレイナの必死さに苦笑しその場は退散することにした。

自室へと向かう途中箱を抱えた沙慈とすれ違った。
「よぉ、その箱、なんだ?」
「え、これは・・・別に・・・い、イアンさんに頼まれてた資材ですっ」
「資材にしては小さいな。でかい皿ぐらいしか入らなそうじゃねぇか」
「そそそそんなことないですよ!あ、じゃあ僕急いでるんでっ」
沙慈は箱をライルに見えないように抱え直し行ってしまった。
「なんだぁ?」
またもや自分は避けられているらしい。

沙慈にまで避けられ、よく考えると起きてから一日中船員の自分に対する態度がおかしいことに気付いた。
自分は何かしただろうか?もしかしてフェルトは自分が彼女にしたことを話したのだろうか?もしかすると、アニューの耳にもその話は入ってしまったのだろうか?
悶々と考えるうちもライルは自室に向かって進んでいた。
やがて自室のあるフロアに入ると初めに探していた桃色の髪があった。
「・・・ライル・・・」
フェルトは目指した自室のドアの前に立っていた。
いつの間に食堂から移動していたらしい。
寄りかかっていたドアからはなれこちらに向かってくる。
「よぉ、フェルト、さっきぶり?」
皮肉を込めて言った言葉にフェルトは無表情のままだ。
「・・・何か用かい?」
内心いつ行動を起こそうかとしていると意外にも先にフェルトが動いた。
「・・・・・・着替えてからでいい」
言外に着替えてこい、と。
とりあえず5分待ってもらいライルは自室で制服に着替えることにした。

着替えを終え扉の外へ出るとフェルトはさっきの位置にいた。
「行こう」
控えめに袖を引かれ彼女の後に続いた。
無防備な後ろ姿に抱きつけば一発で解決しそうなものの、フェルトに連れて行かれる先がどうやら食堂らいしことに違和感をおぼえ今はやめておくことにし、大人しくついて行く。
食堂のドアが見えたところでフェルトは一人壁を蹴って中に入っていってしまった。
「おいおい、連れてきといて・・・」
イライラも限界にきつつある。
いっそのこと抱くなりなんなりしてフェルトに自分の存在をわからせてやろう。
ライルは食堂の扉を開けた。

一瞬、耳が馬鹿になった。
数発の炸裂音が続けざまにしたからだった。
そして同時に聞こえた言葉。

『Happy Birthday ロックオン!!』

正面にはクラッカーを持った船員達。
質素なハズの食堂はそれなりに飾り付けが施されており、奥にはワンホールケーキがある。
「・・・・・・えっと・・・?」
だいたいの状況はわかるのだが頭のいくらかがまだ理解仕切れていないようだ。
ライルが混乱してると先頭にいたフェルトが小さく吹き出した。
それにつられ周りの船員達も笑い出す。
自分が笑われていることにライルが気付きなんらかの抗議を言い出す前にアニューは言った。
「今日は3月3日よ。ライル、貴方の誕生日なんでしょう?」
3月3日。
その日はライルとニールの生まれた日。
言われて初めてライルは一連の不可解な行動を理解した。
フェルトもミレイナも沙慈も、この部屋や企画をライルから隠していたのだ。
「フェルトがね、教えてくれたのよ。今日だって。」
スメラギはフェルトの肩を掴み前方に押し出す。
「・・・おめでとう、ライル。」
少し気まずそうに微笑み祝辞を述べられる。
フェルトが何故自分の誕生日を知っているのかは考えればすぐにわかる。
兄に聞いたのだろう。兄の誕生日を。
双子なのだから大抵は同じ日に生まれるものだ。
現状を飲み込み、苛立ちが消える。
フェルトは今、仲間の一人であるライルの誕生日を祝っているのだ。
既に怒る理由はなかった。
アニューがライルの手を引きケーキの前に連れて行く。
ラッセが不器用にロウソクに火をつけていくのを眺め、こういうことが久しぶりのことなのだと思い出した。
最後に盛大に祝ってもらったのは14の時だったか。
あの頃ライルはわざわざ寄宿舎から実家に戻ってきて祝うことを強要された。
最愛の妹エイミーの願いとあって断るわけにも行かず毎年3月3日は実家で過ごしていたのだ。
しかし家族が兄のみになってからはもう3月3日に実家に戻ることはなくなった。
そして寄宿舎でもプレゼントをもらう程度の誕生日だった。
社会人になってからはそんなことをする気も起こらず人に誕生日を教えることも滅多になかった。
カタロンではまぁパーティーなんぞ開けるわけもないだろう。
懐かしさの中でライルはロウソクの火を吹き消す。
子供らしい祝い方はミレイナあたりが言い出したのだろう。
一番はしゃいでいる気もする。
フェルトが果物ナイフでケーキを人数分切り分け小皿に乗せ渡していく。
ありきたりなショートケーキでもこんなに美味いのだと、美味く感じれるのだと思い出す。
隣でアニューが微笑み、彼女らしくなく口の端にクリームを付けているのを指摘され恥ずかしがっている。
皆、各々誰かと話し笑い食べ飲み、一時の平和に浸っている。
二度と戻らないあの風景が今目の前に広がっていて、中心には兄ではなく自分がいる。
そのことにライルは並々ならぬ充実感を得た。

会はそう長く続くことなく片づけが始まった。
トレミーにいる以上あまり長時間ブリッジを空けることは死を招く。
先にラッセとアニューとミレイナが抜け、残りのメンバーも待機場所に戻り最後にフェルト、ライル、アレルヤ、マリーが残された。
部屋の装飾の片付けにはアレルヤとマリーが、食器類の片付けにはフェルトとライルが取りかかった。
アレルヤ達は二人の世界に入ってしまい人前だというのにイチャイチャしている。
ため息をつくライルの視界に手のつけられていない一切れのケーキが映った。
「あれ、誰か食べなかったのか?」
フェルトに聞くと彼女は一瞬気まずそうにしてから余分に切ってしまったのだと答えた。
「私の部屋に持って行くから気にしないで」
納得した。
それは誕生日を迎えたもう一人のためのものなのだ。
彼女はライルを不快にさせないように隠しているつもりだろうがまるわかりだ。
女の子にここまで思われる兄はよほどの人格者かテクニシャンだったに違いない、とライルは苦笑いを浮かべる。
ライルはふと自分の右手を見る。
そこにはまだ洗っていないナイフがある。
昔を思い出した上に気分がいい今、ライルは素直な自分を出した。
「じゃ、半分もらうな」
そう言うとケーキを半分に切った。
「えっ」
半分が別の皿に移されるのを見てフェルトは声を漏らした。
素直なライルはここまでだった。
「女の子にだけ残り物処理させちゃ悪いからなぁ。太っちゃうし?」
顔を赤く染めたフェルトは俯いてしまった。
「大丈夫。半分は俺の部屋に持って行くから」
先程のフェルトの言葉と同じニュアンスを込めて言う。
食べる、ではなく持って行く。
つまり別の誰かへ捧げるために。
フェルトもそれに気付いたようで、顔をバッとあげると嬉しそうに「うん」と微笑んだ。

自室に引き上げたライルはその静寂に寂しさを覚えた。
いつも側にいるハロはメンテナンスへ行き、室内はライル一人しかいなかった。
ベッドに腰掛けたまま机の上に置いたケーキを見やる。
柄にもなく兄のことを思う。
自分が一人で祝っていた誕生日を彼はどのように過ごしていたのだろう?
人一倍人徳の高い兄のことだからそれは盛大に祝ってくれる誰かがいたのだろう。トレミーの船員のように。
しかしかつてのような喜びは感じなかったに違いない。
家族を一番に思っていた彼だったから。
せめて死ぬまえに最後に一度くらい互いの誕生日を祝っても良かった気がする。
たった二人きりの双子なのだもの。
今はもう一人になってしまったけれど、自分には最上級にいわってくれる仲間ができた。
だから今年は満足だった。
彼にはきっとあの桃色の女の子が祝いの言葉を囁いているだろう。
ライルの口元に笑みが浮かぶ。
ホント、今日の自分はおかしい。
こんな言葉を言うなんて。
でも、悪くはなかった。

「誕生日おめでとう、ニール兄さん」

昔は返ってきた言葉は今はもうないけれど、彼の愛した人々が代わりに返してくれた、そんな錯覚もいまは心地良い。

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